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2014-11-26 (Wed)
11月15日~16日に開催された、2014年度日本トンボ学会大会で私に強い印象を与えたもう一つの研究発表は、二橋亮氏(産業技術総合研究所)による「トンボの遺伝子解析の新たな手法*」でした。

ワトソン&クリックによるDNAの二重らせん構造の発見以来の分子生物学の飛躍的発展により、DNAの塩基配列情報の解析はヒトゲノムの完全解読を成し遂げ、親子関係確認や犯罪捜査などでのDNA利用は茶の間の話題になるまで一般化しています。

分子生物学時代以前の伝統的な動物分類学は、主に外部形態の比較に立脚し、これにせいぜい比較発生や生物地理学を加味する程度のものでしたが、DNAを用いることで主観を排除し、同じ手法を用いれば誰もが同じ結論(この場合、系統樹)が得られるところまできています。

この手法は素晴らしい成果を上げており、従来、クジラ目と偶蹄目はそれぞれ独立の分類群として(比較形態学の見地から)取り扱われていましたが、DNAの解析により、クジラ類とカバ類がそれ以外の偶蹄目(例、ブタ)よりも近縁であることが明確になり、クジラ類は「偶蹄目」の中の一つの系統群へと飲み込まれたこと**など、思わず唾を飲むような動きが出ています。

トンボ目でも同様の系統分類の改善がなされていることを、私のブログの記事「トンボ目の系統樹」でも紹介しています。

さて、このあたりまでは、私の頭の中にあったのですが、昨今の「次世代シークエンサー」(大規模かつ効率的なDNA情報の解析手法)の活発な開発の中でRNAの塩基配列を解析する方法(RNA-Seq)が登場していることを、二橋氏の発表から知るところとなりました。

mRNAを生きたトンボの特定部位から取り出すため、実際に当該の組織・器官の細胞で発現している遺伝子を比較対象とし、その塩基配列の暗号1文字の違いも判別しての解析結果が得られるため、従来のDNAの特定領域だけで行われた系統解析(系統樹作成)の結果に変更を迫るものも出つつあるとのことです。

二橋氏は、トンボの特定器官のもつ特定機能にかかわる遺伝子の科や属の間での分化を見事に図示していて、RNA-Seqの威力を見せ付けてくれました。これから、より多くの科からサンプルを得て、このテーマでの研究を完成させる予定とのことで、最終的な成果の発表が楽しみです。

注:
*二橋亮 2014. トンボの遺伝子解析の新たな手法。2014年度日本トンボ学会大会講演要旨集。

**Nikaido, M., A.P. Rooney and N. Okada 1999. Phylogenetic relationships among cetaritodactyls based on insertions of short and long interspersed elements: Hippopotamuses are the closest extant relatives of whales. Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 10261-10266.


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