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2014-12-11 (Thu)
トンボ相とトンボ群集との関係について、数回連続で取り上げたいと思います。

トンボ相」(とんぼそう;odonate* fauna)とは、ある地域(国、地方ブロック、都道府県、市町村、国立公園、etc.)に生息しているトンボ全種のリストを指します。

トンボ群集」(とんぼぐんしゅう:odonate community)とは、ある地域に生息しているトンボ全種の個体群の集合を指します。

生物相と生物群集とは、同じ対象を扱っていますが、観察および記述の仕方が互いに異なっています。

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前者(生物相)は分類学の開祖、リンネがスエーデンの動物相を「Fauna Svecica」として出版して以来、広く行われてきた、地域(とくに国)レベルの分布生物カタログにおける記述方式を踏襲したものです。

したがって、リストされる種の個体数は不問とし、そこに生息しているか、いないかのみを問題にしています。

観察の仕方の特徴ですが、その地域の生物相として報告することを目的とするからには、最大種数になるよう、できる限りの採集努力を払って調査するという方法をとります。

そして得られたデータの記述方式は、確認された種のリストになります。
したがって、データの質は、種ごとに「いる」「いない」のいずれかの値をとる、「全か無か」型のものになります。
もちろん、生物相は、「いる」種のリストという形になります。

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それに対して、後者(群集)は、20世紀にはいってからの生態学の発展の中で生まれた概念であり、生態系の中でそれぞれの役割を果たしている生物種の集まりを意味しています。

生態系の中で果たす役割は、種ごとに微妙に異なりますから(たとえば、花粉媒介昆虫で、種によって、利用する[したがって花粉媒介をする]植物種の範囲が異なるように)、それら様々な種から成っている群集を生態学者が認識する上で、種ごとの個体数(植物では現存量**)の把握は不可欠です。

したがって、動物群集の観察の仕方の特徴は、ある時点(特定年月日、あるいは特定の1年間)における、特定の動物群類群(たとえば、魚類、水生昆虫、トンボ目、etc.)に属するすべての種の個体群の密度を、一定の方法で推定することが主眼であるといことです。

そして得られたデータの記述方式は、観察された種ごとの個体群の密度のリストをベースとしています。

したがって、データの質は、種ごとに連続的な数値をとる、「連続量」型のものになります。

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以上、トンボ相とトンボ群集の違いを生物(動物)一般に置き換えて説明しました。

以前、「トンボ相に異変あり?」という副題をもつ記事を書きましたが、この異変を客観的に第三者に示して納得させる上で、トンボ相とトンボ群集の調査データをどう使ったらよいのでしょうか?

次回以降の記事で検討していきたいと思います。

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注:
*英語で、「odonate」とは、「Odonata(トンボ目)の」という意味の形容詞です。
**現存量は、単位面積あたりの当該の生物種の個体重量の総計のことです。


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