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2018-05-27 (Sun)
今年5月12日、埼玉県西部の溜池を訪れた際、睡蓮の花弁の周辺(写真1)で、連結したイトトンボのどこか落ち着きのない動きが見られました。

クロイトトンボ連結産卵中の事故、背景 
写真1 睡蓮とクロイトトンボ Paracercion calamorum 連結カップル (写真はクリックで拡大します)


目 次
 ◆なんと、なんと
 ◆睡蓮劇場、はじまりはじまり!
 ◆うまく産めないわ
 ◆ほかの場所にしようよ
 ◆決定的瞬間
 ◆やってもうた~
 ◆なぜ、こんなことになった?
 ◆以下、蛇足ですが


なんと、なんと

私の立っていた岸辺から数メートル離れている位置での出来事であるため、肉眼では何が起きているか分かりにくいということで、とりあえず一眼レフカメラの望遠ズームレンズの焦点距離を最大(250mm)にして、画像として記録しておくことにしました。

それを帰宅後パソコン上で現像したところ、写っていたのはクロイトトンボ Paracercion calamorum (Ris, 1916)の連結産卵中のカップルが産卵がうまくいかず、色々トライしている状況でした(写真1)。

そして驚くべきことに、その途中で、連結中の♂の腹が途中で不自然な形で折れてしまう瞬間(写真10)と、その後の「やってもうた~」顔の♂の表情(写真12)が写っていました。

以下、その経緯を物語る写真11点(いずれもトリミングしたもの)を、時系列順にご紹介します。

なお、それらの連続写真をGIFアニメ化したものをYouTube(下記URL)にアップしておきましたので、そちらもご覧ください。



睡蓮劇場、はじまりはじまり!

静止画でのご紹介最初はこれです(写真2)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故1 
写真2 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故1

♀はスイレンの萼(がく)の下面(裏面)に爪を掛けてとまり、萼の下面の水に浸った部分に産卵管を押し当てています。

その♀に連結した♂は、紅色の花弁の基部近くの縁につかまっていますが、やや不安定です。


うまく産めないわ

♀は産卵管を突き立てるのをやめました(写真3)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故2 
写真3 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故2

その後の♀の動きを感じ取ったのでしょう、♂・♀とも飛び立ちました(写真4)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故3 
写真4 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故3

今度は、♂が花弁の先端にとまりました(これはとまり易い)(写真5)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故4 
写真5 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故4

しかし、♀はつかまりどころがないのか、ホバリングしたままです。

♂は気を利かせて、また飛び立ち、スイレンの花弁の並びの上縁まで♀をリフトし、今度は♀が花弁の上端にとまりました(写真6)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故5 
写真6 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故5

おっと、他の♂がニアミスしています。

ただし、直接つかみかかろうとするなどの「嫌がらせ」をするには至りませんでした。


ほかの場所にしようよ

♀は産卵動作をとりますが、この角度では産卵管を花弁に突き立てられませんね(写真7)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故6 
写真7 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故6

このスタンスでは、♂もとまり場がなく、羽ばたいて体勢を維持しようとしています。

♀は産卵管を突き立てやすさをねらったのでしょう(♂の困惑も伝わったのかもしれません)、少し移動して(多分、一度飛び立って少し高度を下げてとまり直して)、花弁の中央やや上の裏面に爪をかけてとまり、産卵管の先で花弁のその面に探りを入れています(写真8)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故7 
写真8 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故7

今度は、♂もとまり場が確保できてほっと一息です。

その後、♀は花弁の裏を後退しながら産卵(の試み)を続け、♂はそれに協力するかたちで、とまり場所を1枚裏側(下側)の花弁の縁(それも、中央少し上)へと変更しています(写真9)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故8 
写真9 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故8


決定的瞬間

「おーっと、やばい!」。
♂の脚がとまり場から離れ、♂はバランスを失いました(写真10)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故9 
写真10 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故9

♂の尾部付属器は♀の前胸背面に連結したままなのに、♂の胸部の体軸は♀の胸部の体軸と時計回りに約90度ずれています。

多数の脊椎骨の並びで成り立っているヘビの胴体であれば、この程度の体の捻じれはどうということはないでしょう。

しかし、腹部がたった10節からなり、腹部の可動方向が基本的に背腹方向に限られているトンボでは、このような捻じれは、強く左右方向に折れ曲がった部分の外骨格(クチクラ)の破断あるいは不可逆的な折れ曲がり、更には内部の筋肉の断裂・変形が起きてしまう恐れがあります。

この♂は、バランスを失った直後から、羽ばたいて体勢を保持しようとしたに違いありませんが、かないませんでした。

次善の策として早目に何かを掴むことで致命的な体の損傷から免れようと、上体が落ちていく方向に出来る限り胸部・頭部を向け、脚にも着地に備えた構えをとらせています。

そして、その「受け身」術が功を奏して、なんとか萼の縁を掴むことができ、これ以上体が折れ曲がるのを食い止めました(写真11)。

クロイトトンボ連結産卵中の事故10 
写真11 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故10


やってもうた~

下の写真12は最後に撮ったものをクローズアップしたものですが、♂の腹部は、第6節後端付近で「へ」の字形に折れ曲がったままです。

クロイトトンボ連結産卵中の事故11 
写真12 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結産卵中の事故11

冒頭の「やってもうた~」顔はこちらです。

残念ながら、このあとこのカップル、とりわけ♂がどうなったかは見届けていません。

♂が連結をはずし、林か草原に移動してゆっくり静養して、体が元に戻ればハッピーエンドなのですが、実際のところは厳しいのではないでしょうか。


なぜ、こんなことになった?

さて、なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

♂がバランスを失う直前のシーン(写真9)では、♂♀とも、40~50度の角度で右に傾いてとまっています。
つまり、どちらも、とりわけ♂は、体の右斜め後ろやや背方に向って重力が働いています。

♂は、左脚を花弁の縁の内側(上側そして表側)にかけることで、バランスを保っています。

写真10では、♀の腹端部が下方やや右に移動しているため、♀の胸部はそれに伴って半時計回りに10度程度回転しています。

当然、♀の前胸に連結している♂は、♀のこの動きで半時計回り方向に振り回されることになり、結果として♂は花弁から脚を離さざるを得なくなります。

この脚を離した瞬間に、♂が羽ばたきと腹部の筋肉群を使って体勢を維持し、なんとか花弁に爪をかければ、腹部の折れ曲がりを防止できたと思われますが、結果は見ての通りでした。

強引に強く羽ばたいて♀の離陸を促す方法もあったはずですが、それを実行する間もなく、体が折れてしまったことになります。

あるいは、♂がバランスをくずして、それを直せないと悟った瞬間に尾部付属器を解除して♀との連結を解くことでも、今回のような♂の損傷は避けるか軽減できたはずですが、そこまで瞬時に判断する能力が備わっているかどうかについては疑問が残ります。

トンボも羽化直後は大変柔らかい体をしていますが、成熟するまでの期間である前生殖期(pre-reproductive period)を通して体の硬化が進み、各筋肉も鍛えられます。

今回の♂はもしかすると、成熟したばかりで、まだ体の一部で硬化が未完成、そして筋肉の力や経験にともなって増強される判断力(行動選択の的確さ、素早さ)も若干未熟だったのかもしれません。

この仮説を確かめるにはこの♂個体をその場で採集して体表の硬度チェックをする必要がありますが、なにせ、このことに私が気づいたのは帰宅後の現像中、仮説を立てたのは更にその後の、ブログ記事を構想し始めてからでしたので、検証はまた次の機会とせざるをえません。

ふたたびこのような機会があるかどうかは、わかりませんが。


以下、蛇足ですが

この溜池では、2年前にもクロイトトンボの産卵カップルの行動を撮影し、そのちょっとユーモラスなシーンをブログ記事にしたことがあります(記事はこれ:「カミさんのためならエンヤコラ:クロイトトンボの2ペア間の軋轢」。

また、この溜池のスイレン群落の様子を以下の記事で写真付きで紹介しています。


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2018-05-25 (Fri)
今年5月12日、夏日予想の好天のもと、トンボの姿を求めて、埼玉県西部の耕作放棄された棚田をかかえる谷戸を訪れました。


目 次
 ◆すわっ、ハラビロトンボ
 ◆サラサヤンマとの再会
 ◆ホバリング羽ばたき術
 ◆靱帯損傷??
 ◆サラサヤンマ♂の観察地点
 ◆♀とのニアミス


すわっ、ハラビロトンボ

その元棚田の脇を流れ下る細い水路(日当たりのよい方)脇の細道を上流方向に向かって歩いていると、小さな黒っぽいトンボが、その水路のほとりのイネ科草本群落(写真2)の中の、枯草の折れ曲がったところに、とまりました(午前11時17分)。

ハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra (Selys, 1878) ♂です(写真1)。

ハラビロトンボ♂ 
写真1  ハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra (写真はクリックで拡大します)

私はハラビロトンボを遠征先の岐阜県と高知県(トンボ王国)では観察・撮影していますが、私の現在の地元である埼玉県、そして関東地方では確認していませんでしたので、ちょっとしたラッキーカードを引いた思いでした。

ハラビロトンボの♂の体色は成熟に伴って、黄色→黒色→青灰色のように変化することが知られています(過去記事「ハラビロトンボ:お色直しは花婿Only」参照)。

今回観察した♂は青灰色の段階に入ってしばらくたったものであるといえます。

♀の未熟個体の体色については「トンボ王国訪問記(1):多彩なトンボ達に迎えられ」を、♀の成熟個体の体色については「トンボ王国訪問記(3):梅雨時の草間にトンボ見え隠れ」を、それぞれご参照ください(過去記事から)。

この、観察された水路(写真2)の最大幅は70cm、水深は数cm程度で、それとわかる水の流れはありませんでした。

ハラビロトンボが観察された細流 
写真2 ハラビロトンボ♂が見られた細い水路


サラサヤンマとの再会

この谷戸を訪ねた主目的は、昨年の6月にこの場でトンボ探訪をした際に、サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri (Martin, 1909) ♂の♀待ち受け行動を観察できたことから(過去記事「サラサヤンマ♂:出会いの場での振舞い(前編)」参照)、それより早いこの時期なら、羽化後間もない新鮮な成虫を見ることができるかもしれない、という期待感からでした。

その期待は、思いのほか、あっさりと現実のものとなりました。

というのも、昨年サラサヤンマを見た湿地の入り口とでもいえる位置にあたる、林縁部の草原上(写真5)で、元気に飛び回るサラサヤンマが待ち受けていたからです(写真3)(11時20分)。

サラサヤンマ♂ 
写真3 サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri

写真3が、約30回シャッターを押して写した中の、ベストショットです(ISO=2000; 1/4000; f=7.1; 250mm)。

この♂は、林縁の草原の地上1.5~2mの高さを、ホバリングを交えながら飛び回っていました。

繰りかえし観察・撮影できましたので、林縁にそって数m~十数mの範囲を飛んでいたとみられます。

私のこれまでの観察経験でも、サラサヤンマの♂が♀を探しながら待ち受けていると考えられる行動は、湿地の泥面から30~50cmあるいは10~100cmの高さでホバリングを繰り返していましたので(こちらこちらの過去記事)、今回の林縁での飛行の主目的は採餌だと思われます。


ホバリング羽ばたき術

写真3からは、この瞬間の4枚の翅の動きを読む解くことが可能です。
後翅は左右2枚とも先端部が下向きに風圧で押し曲げられていることから、打ち上げ動作をしていることがわかります。

一方、前翅は翅の曲がり具合が逆ですので、打ち下ろし動作中ということがわかります。

この、互いに逆向きの動きで大気を押しやることで、その反作用として、後翅の動きはトンボの体を斜め下前方に進める力を、前翅の動きはトンボの体を斜め上後方に進める力を、それぞれ生み出すはずです。

このように、同時にトンボの体を空間的に全く逆方向に押し進めようとする力を産み出すことで、トンボの体は空中のほぼ1点に停止することが可能となり、トンボのホバリング動作を実現させていると見ることができます。

後翅を打ち下ろし、前翅を打ち上げるときも、前後翅の役割は逆転していますが、結果としてトンボの空中静止を生み出す点はまったく変わりありません。

ただし、前翅と後翅とで作用点、つまり翅の基部の蝶番の役割を果たすパーツの空間的位置が前後にわずかにずれていますので、このままでは、それによって生じるトンボの体軸を前後方向に回転させてしまいます。

この体軸の回転を打ち消すため、および重力や風に逆らう力を産むために、トンボは微妙に翅の仰角や振り下ろし速度、前後翅の動きのタイミングなどの微妙な調節が実現するよう、各種飛翔筋の収縮強度やタイミングをコントロールしているに違いありません。


靱帯損傷??

この個体の左後脚は脛節が少し垂れ下がり気味です。

ピントが少しでも合った11枚の写真のいずれにおいても、この脚は同様に垂れ下がり気味でした(例、写真4)。

サラサヤンマ♂ 
写真4 サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri ♂(同一個体)

このことから、この個体の行動上の必要があって左後脚を半伸ばししたのではなく、コントロール不能となって脛節が垂れているものと考えられます。

具体的には、この脚の腿と脛の関節を折り曲げるための筋肉に、不具合が生じていた可能性が指摘できます。

6本ある脚のうちの1本ですから、この個体が採餌や♀の連結・交尾する上で、この不具合はあまり大きな影響はないものと思います。


サラサヤンマ♂の観察地点

写真5は、この♂が観察された場所の景観です。

サラサヤンマの採餌飛翔が見られた林縁 
写真5 サラサヤンマの採餌飛翔が見られた林縁

♂は、左の林縁に沿った、幅2~4mの範囲を飛び回っていました。


♀とのニアミス

この♂が飛び去ったので、私はこの谷戸の更に奥へとゆっくり歩を進めました。

昨年6月に♂の♀待ち受け行動が観察された場所(写真6)を通過します。

サラサヤンマ生息地 
写真6 昨年6月にサラサヤンマ♂の♀待ち受け行動が観察された場所(今年5月撮影)

写真6の場所は、昨年6月には少し乾きはじめた湿土の状態でしたが、(関連記事はこちら)、今回は、数日前のまとまった降雨のせいでしょうか、水にひたった部分が多い状態でした。

一番奥の、湿草原の上流端付近の湿地(写真7)に着きました。

サラサヤンマ産卵動作が見られた湿地 
写真7 サラサヤンマ産卵動作が見られた場所。産卵基質は中央右湿土の朽木

その湿地の、湿土に倒れている朽木にとまって産卵動作をする1頭の♀を、一瞬観察することができました(11時45分)。

しかし、私が通りかかることを感づいたのか、またたくまに飛び去ってしまいました。

ということで、産卵中の♀の写真撮影はお預けとなりました。

今後の林間湿地探訪の際の楽しみとして、とっておきましょう。


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2018-05-23 (Wed)
「渓流の春」シリーズ第1報では、アサヒナカワトンボを取り上げましたが、第2報の今回はヒメクロサナエ Lanthus fujiacus (Fraser, 1936)の独身♂のご紹介です。

なお、春の渓流の主役であるムカシトンボ Epiophlebia superstes (Selys, 1889)は、特別扱いの別シリーズにすでに登場済みです。

今年5月上旬、第1報で取り上げた、アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys 1853の観察を終えた私は、ムカシトンボの産卵の観察が期待される別の水系の沢の源流部に向いました。

そこで、幸運にもアジサイ属の低木の若枝・葉柄に産卵するムカシトンボの撮影に成功しました(こちらの過去記事に詳細)。

その沢の源流部に到着し、渓流沿いの歩行観察を開始してしばらく後の12時50分、1頭の小型のサナエトンボ♂が上流方向から飛んできて、低木の葉の上にとまりました。

ヒメクロサナエです(写真1)。

ヒメクロサナエ♂ 
写真1 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂(写真はクリックで拡大します)

この個体に6分間モデルになってもらい、約30回シャッターを押しました。
その中から2,3点、コメントつきでご紹介します。

写真2は、3ショット後のものをトリミングしています。

ヒメクロサナエ♂ 
写真2 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂ 

写真2からは、サナエトンボ科の類似種とのよい区別点となる、翅胸前面の黄斑、尾部付属器の形態を確認することができます。

この個体に限っていえば、左前翅の縁紋から先端にかけて翅の膜面が翅脈も巻き込んでクシャクシャに変形していることが見てとれます。

おそらく、羽化直後の柔らかい時期に何かにぶつかって変形したか、あるいは伸びきらなかったかの、いずれかでしょう。

それとは別に、左前脚が、左の複眼を抱きかかえるようなか位置取りとなっています。

写真3は、とくに変わった動きはしていませんが、背面から撮っているので、翅胸前面や腹部背面の黄斑パターンの特徴を確認できます。

ヒメクロサナエ♂ 
写真3 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂ 

最後の写真4は、右前足の脛節の先端付近で右複眼をこすっている様子が見てとれます。

ヒメクロサナエ♂ 
写真4 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂

写真4からは、明らかにこの個体が複眼を含む体部の清掃行動を行っていたことが分かります。

同様に、写真2の左足の動きも、左複眼の清掃行動の一端であったと見るのが妥当でしょう。

このヒメクロサナエの観察はこのくらいにして、私は、当日の私の主目的であったムカシトンボの連続的観察へと、渓流沿いの道を再び歩き出しました(その日のムカシトンボについてはこちらこちらで報告済みです)。

当ブログでは過去にもヒメクロサナエを取り上げています(クリックで開きます)。
 「ヒメクロサナエとの出会い」(羽化直後)

最後に、今回ヒメクロサナエを観察することができた、渓流の一角の景観写真を掲げておきます(写真5)。

ヒメクロサナエ撮影地点 
写真5 ヒメクロサナエが観察された地点(沢の源流部)


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2018-05-22 (Tue)
前回記事では、今年初めて私の前に登場してくれたアサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys 1853の成虫たちをご紹介しました。

今回の記事では、そのうちの1個体(♀)の脚部の剛毛の配列パターンに着目して、同じカワトンボ科の3種と比較しながら考察します。


目 次
 ◆アサヒナカワトンボ♀の脚部
 ◆カワトンボ科の他の種との脚部剛毛列の比較
 ◆アオハダトンボ♀の脚部
 ◆ミヤマカワトンボ♀の脚部
 ◆ハグロトンボ♀の脚部
 ◆まとめと考察
 ◆「脚モデル」トンボたちの全身像


アサヒナカワトンボ♀の脚部

前回記事で紹介したアサヒナカワトンボ2型の♂個体と♀個体のうちの、♀個体(写真1)の頭・胸部付近を拡大してみたところ(写真2)、意外と「堅実」な剛毛が列生してることに気づきました。

アサヒナカワトンボ♀ 
写真1 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa ♀ (再掲)(写真はクリックで拡大します)

アサヒナカワトンボ♀ 
写真2 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa ♀(同一個体)

写真2を更に(クリックして、更に虫メガネマークをクリックして)拡大して見ると、脚の腿節、脛節の剛毛の状態を観察することができます(後方の脚になるほどピントが甘く、葉に落ちた影も邪魔ですが)。

そうすることで、これら剛毛の長さの区間変化パターンに規則性があることが見てとれます。

脛の毛は、「膝」関節側、つまり基部から先端方向に向かって、長毛から短毛へと直線的に変化しています。

一方、腿の毛は、先端側から3分の1付近に長さのピークがある、円弧状の長さの分布を示しています。

ただし、後脚の腿節では円弧状というより、伏せた時計皿を横から見たような毛長の変化パターンとなる傾向があります(中脚ではその中間)。

そして、腿・脛とも剛毛が2列に生えていて、逆「ハ」の字形に開いています。

このような剛毛の配置は、あきらかに、カワトンボがやや大き目の餌動物を空中で抱きかかえるようにキャッチしたときに、餌動物が逃げおおせたり、滑り落ちたりする確率を低下させる機能をもつといえます(餌動物保持機能)。

脚の剛毛には、これ以外にも、自分の腹端部や複眼、更には脚同士をこすり合わせて、それら体表部についたゴミや埃を取り除く際にも、箒や刷毛の先と同じように役立ちます(体清掃行動:関連記事はこちらこちら)。


カワトンボ科の他の種との脚部剛毛列の比較

ここで、カワトンボ科の他の種でも、脚部の剛毛列はアサヒナカワトンボと同様なのか、それとも異なる配列プランのもとで並んでいるのか、が気になりました。

ということで、私が撮影した過去写真を発掘し、アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)の脚部についても、クローズアップして観察してみました。

普通と順序が逆ですが、目的に即して、脚部に脚光を浴びせた(つまりその部分をトリミングした)写真を先に3種分並べ、その後でそれぞれの脚の持ち主の全身写真を並べることにします。

なお、煩雑になるので、♂♀両方について比較するのは避け、比較対象元である写真1,2のアサヒナカワトンボが偶々♀だったので、♀同士の比較に絞りました。

※同じ種でも地域変異や個体変異がありますので、以下の比較は必ずしも種間の比較として必ずしも正確なものとはいえません。しかし、これが刺激となって、各種について各地域ごとに複数の標本を得て、それらを定量的に計測して統計的に比較するなどの、本格的研究につながることもあるかもしれません。


アオハダトンボ♀の脚部

まずは、アオハダトンボ♀の脚部です(写真3)。

アオハダトンボ♀脚部 
写真3 アオハダトンボ Calopteryx japonica 

アオハダトンボは、アサヒナカワトンボと比べて、脚は長く、脚の毛も少し長いですが、毛の長さの空間的変化パターンはほぼ共通していますが、腿の毛の長さのピークは中央付近にあり、また脛節の毛の長さのピークは脛節の基部端ではなく、それよりも少し先端側の位置にあります。


ミヤマカワトンボ♀の脚部

次は、ミヤマカワトンボ♀の脚部です(写真4)。

ミヤマカワトンボ♀脚部 
写真4 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia 

ミヤマカワトンボは、アサヒナカワトンボと比べて、脚は長いですが、やはり、毛の長さの空間的変化パターンはほぼ共通しています。ただし、腿の毛の長さのピークは中央付近にあります。

ミヤマカワトンボの脚の毛の長さや見た感じの硬さは、比較対象3種の中で、一番アサヒナカワトンボに似ています。


ハグロトンボ♀の脚部

最後に、ハグロトンボ♀の脚部です(写真5)。

ハグロトンボ♀の脚部 
写真5 ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata 

ハグロトンボはアサヒナカワトンボに比べて、やはり脚が長いですが、毛の長さの空間的変化パターンは、ほぼ共通しています。ただし、腿の毛の長さのピークは中央付近にあります。
ハグロトンボは脚の毛は、4種の中で最も長く、そして細いです。


まとめと考察

以上をまとめ、若干の考察を加えます。

4種いずれにおいても、脛毛は「膝」関節側、つまり基部から先端方向に向かって長毛から短毛へと直線的に変化しています。
ただし、とくにアオハダトンボでは、毛の長さのピークは脛節の基部端ではなく、それよりも少し先端側の位置にあります。

腿の毛は中央付近に長さのピークがある円弧型を呈した長さの分布を示す。
逆に言えば、脚の付け根付近や「膝」関節に近いところの毛長は短くなっている(このことは脛節についてもいえる)。
これは前後の脚同士の擦れ合い(もしくはそれに近い動き)に際して、毛が動きを邪魔しないように、短い毛長が遺伝子にプログラムされているからだろうと思います。

アサヒナカワトンボで毛長のピークが腿節のより先端近くにあるのは、他種にくらべて腿節が短いためではないでしょうか。

いずれの種でも、後脚の腿節では時計皿を伏せたような毛長の変化パターンとなる傾向があります。
これは毛の擦れ合い予防の範囲が腿節の基部近くと先端近くだけに留まるでしょうから、前脚よりも長い後脚では長毛の範囲が相対的に広くなるはず、という説明が可能です。


「脚モデル」トンボたちの全身像

以下、脚部を披露してくれた♀たちの全身写真を掲げておきます。

まずはアオハダトンボ♀です(写真6)。
この♀を観察した生息地の状況はこちらの過去記事にあります。

アオハダトンボ♀ 
写真6 アオハダトンボ Calopteryx japonica (写真3と同一個体)

次はミヤマカワトンボ♀です(写真7)。
この♀を観察した生息地の状況はこちらの過去記事にあります。

ミヤマカワトンボ♀ 
写真7 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia  (写真4と同一個体)

最後は、ハグロトンボ♀です(写真8)。
この♀を観察した生息地の状況はこちらの過去記事にあります。

ハグロトンボ♀ 
写真8 ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata  (写真5と同一個体)


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2018-05-21 (Mon)
今年の5月1日、好天のもと、ムカシトンボ観察を主目的に、車で自宅から日帰り圏にある山地の渓流部にプチ遠征した際に、最初に出迎えてくれたのは、うら若きアサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys 1853(注*)たちでした。

今回はその状況を報告するとともに、成虫出現初期や後期の個体と比較した上での本種の羽化後の体色変化について簡単に整理することにします。


目 次
 ◆最初は、無色翅型♂
 ◆次はうら若き♀が
 ◆最後は橙色翅型♂
 ◆体色と成熟度
 ◆橙色翅型♂の体色変化
 ◆無色翅型♂の体色変化
 ◆♀の体色変化
 ◆まとめ


最初は、無色翅型♂

その日、私は、今年初めてムカシトンボ♂を観察・撮影した渓流の一角(関連記事はこちら)へとつながる林道のゲート手前で車を停めました。

徒歩で沢の上流方向へと進んでいくと、しばらくして、沢斜面の低木の葉の表面に、1頭のアサヒナカワトンボの無色(透明)翅型♂がとまっていました(午前10時16分)。

私がカメラを構えて近づくと、すぐ近くの別の低木の葉にとまり替えました(写真1)。

アサヒナカワトンボ無色翅♂ 
写真1 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 無型♂ (写真はクリックで拡大します)

この無色翅型♂が、今シーズン最初のカワトンボ撮影のモデルになってくれました。


次はうら若き♀が

私がムカシトンボの姿を求めて、この沢のより上流側へ歩を進めると、今度はアサヒナカワトンボの1♀が低木の葉にとまっていました(写真2)(10時43分)。

アサヒナカワトンボ♀ 
写真2 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa ♀

写真2の♀は、この時期の無色翅型♂(写真1)と外見上は紛らわしいですが、腹部全体が円筒状でやや太く、尾端部と腹部第2節のつくりが♂と全く違う点に着目すれば意外と簡単に区別できます。

※ カワトンボ属の♀の翅は写真2のように、無色透明なのが一般的ですが、ニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869 では西日本で淡橙色翅型が広く出現します(参考過去記事[写真つき]はこちら;くわしくは、尾園ほか2012参照)。


最後は橙色翅型♂

上記の♀の発見地点付近は、沢の水も枯れ気味で、これ以上上流側を探索してもムカシトンボの姿は期待できないと判断し、私は折り返して下流側に歩を進めました。

すると、5,6分歩いたところで、今度はカワトンボの橙色翅型の♂1頭を見つけました(写真3)。

アサヒナカワトンボ橙色翅♂ 
写真3 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 橙色翅型♂ 

この♂も、写真2の♀と同じ種類の低木の葉にとまっています。

私が何枚か写真をとっていると、おっと飛び立ちました(写真4)。

アサヒナカワトンボ橙色翅♂ 
写真4 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 橙色翅型♂ 同一個体

トンボはピンボケとなりましたが、動きがあり、ちょっとユーモラスなシーンです。

この後、この♀は、また同じ葉にとまりました。

今季初対面のカワトンボとの出会いのスケッチはこれくらいにして、以下、今回の写真と過去に撮影した同種成虫の写真とを比較しながら、成虫期の進行にともなう体色・翅色の変化について、簡単に整理します。


体色と成熟度

カワトンボ属の成虫は、他の多くのトンボ同様、羽化後の成熟とともに、体色や翅色を変化させます。
 ※過去記事「お化粧開始!:カワトンボ橙色型♂」も参照。

以下に、2016年4月6日(出現初期)に別の山系に属する細流の河畔林で撮影したアサヒナカワトンボの二型の♂と♀の写真と、2017年6月上旬(出現後期)に河川中流域の傍流畔で撮影したアサヒナカワトンボの二型の♂の写真を過去記事から再掲します。

中間の時期にあたる今回撮影の写真も比較のため再掲します。

4月と6月の写真の個体群の生息地は、いずれも今回(5月)の生息地と異なりますし、また同じ個体群内でも個体変異が存在します。

しかしそれぞれを代表と考えれば、大まかな傾向は見て取れるでしょう。


橙色翅型♂の体色変化

まずは橙色翅型♂です(写真5、3、6)。

Mnais_costalis_160406_A  
写真5 アサヒナカワトンボMnais pruinosa 橙色型♂(過去記事から再掲) 2016年4月6日(出現初期)

アサヒナカワトンボ橙色翅♂ 
写真3(再掲) アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 橙色翅型♂ 2018年5月1日(出現前期)

アサヒナカワトンボ橙色翅型♂
写真6 アサヒナカワトンボ橙色翅型♂(過去記事から再掲) 2017年6月上旬(出現後期)

出現初期写真5)の個体は、体の表面に白粉が吹いておらず、翅の発色も不十分で、翅前縁中央部に帯状に伸びている不透明斑の発色不足が目立ちます。

また、カワトンボ♂の、♀との大きな違いの一つである、縁紋の赤色が発現されておらず、白っぽいままです。

※ 羽化後の日数がまだ少ないと思われるこの個体は、人間の発達段階に例えれば、児童期の段階のものといえるでしょう。

一方、出現後期写真6の♂では、体表は真白に粉が吹き、翅も美しい琥珀色を見せつけています。
そしてもちろん、不透明斑の白っぽさは消え去り、縁紋は真っ赤で、「完熟」個体であることを見せ付けています。

※ 人間の発達段階に例えれば、青年後期を通り越した成人期の段階に相当します。

今回記事の主役の一員である写真3の♂は、翅の発色が進んでいないところでは出現初期(写真5)の個体に近いですが、体表、とくに胸部や腹端部にうっすらですが白粉が吹き始めています。

※ このことから、今回記事のこの♂は出現中期で性的成熟も中間段階にあること、人間の発達段階に例えるなら思春期(青年前期[+中期])にあるということができるでしょう。

この体色変化の段階を参考にすることで、今回記事のアサヒナカワトンボは出現前期(ただし、初期ではない)に相当すると判断しました。

今年(2018年)は、温暖な春ということで、関東地方でも例年より1週間ほど早く生物季節が進行していましたが、今回の観察ポイントは、沢の上流部(つまり、いくらか冷涼)ということで(写真5,6を撮影した)、より下流部に比べて生物季節の進行が遅くなっているのでしょう。
 

無色翅型♂の体色変化

次は無色翅型♂です(写真7、1、8)。

  Mnais_costalis_160406_B 
写真7 アサヒナカワトンボMnais pruinosa 型♂(過去記事から再掲) 2016年4月6日(出現初期)

アサヒナカワトンボ無色翅♂ 
写真1(再掲) アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 無型♂ 2018年5月1日(出現前期) 

アサヒナカワトンボ無色翅型♂
写真8 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 無色翅型♂(過去記事から再掲) 2017年6月上旬(出現後期)

出現初期写真7)の個体は、同時期の橙色翅型♂と同様、体の表面に白粉が吹いておらず、縁紋も白っぽいままです。

※ 人間でいえば児童期。

一方、出現後期写真8の♂では、体表は腹部の中間部と翅胸背面・側面を残して白粉が吹き、縁紋には赤味が発現しています。

※ 人間でいえば青年後期から成人期。

今回記事の主役の一員である写真1の♂は、体表にうっすらですが白粉が吹き始めていますが、縁紋は白いままです。

※人間でいえば思春期。


の体色変化

最後はです(写真9、2、10)。

Mnais_costalis_160406_C 
写真9 アサヒナカワトンボMnais pruinosa ♀(過去記事から再掲)2016年4月6日(出現初期)

アサヒナカワトンボ♀ 
写真2(再掲) アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa ♀ 2018年5月1日(出現前期)

カワトンボ♀ 
写真10 アサヒナカワトンボMnais pruinosa ♀ 2017年6月5日(出現後期)(新規掲載)

出現初期写真9)の♀個体は、体の表面に白粉も汚れも一切なく、新鮮な印象を与えます。翅も同様です。

※ 人間でいえば児童期。

一方、出現後期写真10の♀は、昨年6月5日(出現後期)に、写真5~9の生息地の山系と互いに隣接する山系に属する生息地で撮影した、アサヒナカワトンボ♀です(新規掲載)。

この♀は、腹端部や翅胸部腹面などにうっすらと白粉を吹き、翅の汚れや曇りが目立っています。
ただし、♂と異なり、成熟さらには老化が進んでも縁紋は白いままです。

※ 人間でいえば青年後期から成人期。

今回記事の主役の一員である写真2の♀は、尾の先端や脚の腿節・脛節に極うっすらと白粉が吹き始めていて、翅にも若干、曇りと硬さが増しているようにうかがえます。
※人間でいえば思春期。


まとめ

というわけで、今回私を出迎えてくれたアサヒナカワトンボ達は、いずれも人間でいえば思春期真っ只中、もう少しすれば青年後期として婚活に勤しむようになる、そういう段階にある元気な仲間であり、ライバル達だったようです。

※児童期、思春期、青年期、成人期はあくまでも人と並べた場合の例えで当ブログ記事で比喩的に使用したもので、昆虫を材料にした科学論文での使用は適しません(言うまでもありませんが)。ブログで親しみを込めて用いやすい、これ以外の人間社会用語、「青春」「婚活」「結婚」「不倫」「離婚」なども同様です。ただし、「求愛」courtship は昆虫を含め、動物行動学で古くから用いられていますので、これに限っって論文での使用に問題はありません。


引用文献:

尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012) 『日本のトンボ』 文一総合出版。


*注(過去記事から再掲):カワトンボ属Mnaisは、日本に2種(二ホンカワトンボMnais costalis Selys, 1869とアサヒナカワトンボM. pruinosa)が分布しており、両種の分布が広域的に重なっているところ(同所的分布)もあれば、戦国時大名のように領域を分け合っているところ(側所的分布)もあります。
 同所的に分布しているところでは、形質置換が起こり、両種の形態的差(翅脈の横脈数、翅の不透明斑のサイズなど)が明瞭になるため、生態写真からの種の同定は比較的正確に行えますが(下記リスト記事1&2を参照)、側所的分布の場合は、幼虫の尾鰓の形態は別として、形態的特徴だけからの種の同定は非常に困難で、DNAによる判定が得られるまでは確信が持てません(下記リスト記事3を参照)。
 ただし、側所的分布であっても、最近のDNA判定を採用した研究により、どちらの種が分布しているから判明している場合には、その研究を信頼してどちらか一方の種名を充てることが可能となります。
 今回は、苅部ほか(2010)に依拠して、アサヒナカワトンボと判定することができました。

参考となる、以前の記事:

注の引用文献:
苅部治紀・守屋博文・林 文男(‎2010):神奈川県を中心としたカワトンボ属の分布。Bull.Kanagawa prefect. Mus. (Nat.Sci.),(39):25-34.


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