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2017-06-15 (Thu)
6月上旬の好天の日の、比較的きれいな水が流れる河川中流部でのトンボの観察は、前回記事のミヤマカワトンボに続いて、今回もカワトンボ科の種が主役を務めます。

午前10時半をまわった頃、私は川の堤防沿いの傍流部(写真1)の上流側から下流側へと歩を進めようとしていました。

カワトンボ科3種が同時に観察された傍流部 
写真1 カワトンボ科3種が同時に観察された傍流部 (写真はクリックで拡大します)

すると、水辺に生い茂るヨシの類の葉の上に、アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys, 1853* の無色翅型♂がひっそりととまっているのが目に入りました(写真2)。

アサヒナカワトンボ無色翅型♂
写真2 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 無色翅型♂

頭部、腹部に白粉が吹いて、十分成熟している様子がうかがえます。

この日、川の本流のほうではミヤマカワトンボとアオハダトンボは見られましたが、アサヒナカワトンボの姿はなく、この傍流に限って観察することができました。

この傍流沿いの少し下流方向には、アサヒナカワトンボ橙色翅型1♂もたたずんでいました(写真3)。

アサヒナカワトンボ橙色翅型♂
写真3 アサヒナカワトンボ橙色翅型♂

こちらの♂は、頭部・腹部はもとより、胸部にもびっしりと白粉が吹き、橙色翅型♂らしさを全開しています。

登場の順序が逆になりましたが、上記のアサヒナカワトンボ無色翅♂のいた場所と橙色翅♂のいた場所の中間には、アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869 の♀もとまっていました(写真4)。

アオハダトンボ♀
写真4 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♀

アオハダトンボ♀の全面黒褐色の翅は、アサヒナカワトンボの橙色の翅と比べると、落ち着きがあり、気品さえ感じさせます。

翅の白い偽縁紋(ぎえんもん)はアオハダトンボの♂にはないので、雌雄の区別は簡単です。
更には、よく似た種であるハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853) では♂・メスとも偽縁紋を欠くので種の判別も楽々です。
それに対して、アオハダトンボとハグロトンボの♂同士の判別は注意を要します。

この♀は、ときおり、翅をゆっくり開いてパタリと閉じる動作をしていました。
もしかすると、配偶者探しをしている同種♂に、「私はここよ!」とサインを送っているのかもしれません。
♂はどこから現れ、どこで見ているか、♀にはわかりませんから、♂が視界にはいらなくても、♂が来そうな場所では、このようなサインをときおり示すことは効果があるのではと思います。

さて、私が傍流を少し下流方向に歩くと、傍流の終端部付近の水辺の大石の上には、ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853 の1♂がとまっていました(写真5)。

ミヤマカワトンボ♂
写真5 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia 

このミヤマカワトンボ♂も、写真のように、時々翅を開いてはパタリと閉じる行動を示していました。
長い6本の脚でふんばって長大な体を支え、琥珀色の大きな翅を開閉するのですから、とても目立ちます。
おそらく♂同士のサインとして、「ここは私の なわばり だ。近寄るとろくなことはないぞ」といったような意図を発信しているものと思われます。
それと同時に他所から飛んできた♀に対しては、「あ、ここをなわばりに決めて頑張っている♂がいるんだ。。。」と判断する材料を与えることにもなっているでしょう。

行動の意図についての想像はこのくらいにしておきましょう。

結局、この日私は、この短い区間に、カワトンボ科3種が勢ぞろいしているのを目撃することができました。
まるで銀座通り。ちょっと狭いので裏銀座といったところでしょうか。

3種の中でた、アオハダトンボはなかなか見ることのできない種ですので、それにここで会えたことは、私にとってラッキーな一日となりました。

そんなカワトンボ銀座の路上で、脇役に甘んじていたのは、ヤマサナエ Asiagomphus melaenops (Selys, 1854) ♂(写真6)です。

ヤマサナエ♂
写真6 ヤマサナエ Asiagomphus melaenops 

このヤマサナエ♂は堤防側水辺のコンクリートの塊の上にとまり、カワトンボ達には我関せずとばかり、水面方向をじっと見つめていました。

この構えは、おそらく、♀が来たら交尾し、♂が来たら追い払うのでしょう。
この予想があたっているかどうかを含め、このトンボも、いずれじっくり継続観察してみたいと思っています。

ちなみに、ヤマサナエは河川本流に接する河原の石の上でもこの日、数個体確認できました。
どうやら、今が成虫の繁殖活動の最盛期なのでしょう。

ライバル種(?)のアオサナエ Nihonogomphus viridis Oguma, 1926 も♂1個体だけでしたが、本流側のヤマサナエと同じような場所で観察できました(写真7)。

アオサナエ♂
写真7 アオサナエ Nihonogomphus viridis 

アオサナエはわき役にするには惜しい、洒落た色合いをしていますが、このブログの以前の記事では一度主役として取り上げていますので、よろしければそちらをご覧ください。

最後に付け足し。
この日、コヤマトンボ Macromia amphigena Selys, 1871 の♂が本流の川面上をスピーディーにとびまわっていました。
撮った写真は、「オオヤマトンボではなくコヤマトンボだ」との判断には利用できましたが、ブログにアップできるレベルには程遠いものでした。

コヤマトンボのスピードと撮影テクニックの対決には完敗しましたが、力を付けていずれリベンジしたいと思っています。


*注:アサヒナカワトンボと、同属のニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869 は成虫の形態による区別は非常に困難ですが、当該観察地点はアサヒナカワトンボの単独分布地域に含まれていますので、それに従っています。より詳しいことに関しては、過去記事(こちら)を参照。


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2017-06-14 (Wed)
6月上旬の好天の日、午前9時過ぎに、比較的きれいな水が流れる河川中流部にカメラ持参で出かけました。

川面の上に岸のから突き出た竹の葉にとまるミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853 ♀が私を出迎えてくれました(写真1)。

ミヤマカワトンボ♀(1) 
写真1 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia ♀(1) (写真はクリックで拡大します)

前脚、中脚の爪で葉の縁を左右からしっかりホールドし、後脚のうちの1本は、葉の表面に踏ん張り、後半身を水平より高く保つ、つっかえ棒の役割を果たしているように見えます。

写真的には、逆光気味であったため、このトンボの特徴であるベッコウ色の翅の風合いが幾分とらえられているように思います。

このモデルは、カメラマン(私)の激写にもたじろぐことなく、その場にじっととまっていてくれましたので、次に私は正面に回り込んで、この♀の表情をとらえてみましたた(写真2)。

ミヤマカワトンボ♀(2)
写真2 ミヤマカワトンボ♀(2)

目つきや口元のしぐさから、このトンボが笑っているように見えるのは私だけでしょうか?

硬く考えれば、トンボに「可笑しい」という感情があるとは思えませんし、百歩譲ってそのような感情があったとしても、その感情の表し方がヒトのように目を丸くし、歯を見せることにはならないでしょう。

とはいえ、このような偶然の一致を昆虫を始めとした生き物の中に見出すことも、私の自然観察・撮影の楽しみの一つとなっています。

写真3、川の対岸を少し下流側に歩いた先の石の上にとまるミヤマカワトンボ♀(別個体)です。

ミヤマカワトンボ♀(3)
写真3 ミヤマカワトンボ♀、別個体

この態度は、まるでナワバリを見渡して♀の到来や侵入♂を監視している♂個体のように見えます。

もちろん、♀はナワバリを占有しませんので、一時的にこのような場所をとまり場として利用したにすぎません。
一時的にせよ、なぜそこを利用したのでしょう?
単に移動中の休憩なのか、それとも♂のいそうな場所とみて♂の接近&求愛を待ち受けるためなのか、それとも小昆虫をとらえて餌にしようとしているのか、その判断をするには私の観察の経験が短過ぎるようです。

いずれ腰を落ち着けて、特定の種をじっくりと継続観察してみたいものです。

ミヤマカワトンボには昨年5月上旬に♂個体を観察したときの印象をブログに書いていますので、よろしければ御笑覧ください(こちら)。
その記事の末尾では、学名の由来についても触れています。


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2017-06-09 (Fri)
今年5月末の私の溜め池巡りでは、コサナエ、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボ、そしてクロスジギンヤンマが主役を務めました。

そんな中、このまま取り上げてもらえないと、ふてくされてしまうかもしれないトンボたちがいます。

それは、あまりにもどこにでもいるため、スクランブル交差点を渡る主人公の背景や前景を横切る群集を構成する人々同様、注目されない者たちです。

そう、クロイトトンボ Paracercion calamorum (Ris, 1916)シオカラトンボ Orthetrum albistylum (Selys, 1848) といった見慣れた普通種です。
本来、親友であり、一番大事にしなければいけない者たちかもしれません。

私のように住み始めて数年の土地で、新しいトンボとの出会いを求めて歩き回るものにとって、彼らは親友というよりも、その他大勢にならざるをえません。

しかし、将来、一通りのトンボたちと知り合いになった頃には、彼らとじっくり親友付き合いしたいものです。

前書きが長くなりました。

今回のため池回りで撮影した、脇役たちの写真を下に掲げておきます。

シオカラトンボ♂
シオカラトンボOrthetrum albistylum

このシオカラトンボは沈水植物が繁茂する溜め池の上流端の土砂の多い遠浅の岸の短い棒先にとまっていました。
近づくと飛び上がりますが、近くにとまります。
とまる際に向く方向は、水のある方向です。
♀がきたら交尾を挑み、他の♂が来たら追い払うのでしょう。

 クロイトトンボ♂
クロイトトンボParacercion calamorum ♂

クロイトトンボ♂は、ヒシの生育する溜め池のヒシの葉の上にとまっていました。
ときたま飛び上がり、水面上を低く飛び回ってまた同じような場所にとまります。
♀がいたら交尾しようという魂胆がうかがえます。

ショウジョウトンボ♂
ショウジョウトンボCrocothemis servilia ♂

ショウジョウトンボCrocothemis servilia (Drury, 1770)は全身真っ赤で目立ちますので、3年前の7月に私が市街地の池で最初に出会った際はしっかり主役を務めています(ブログ記事はこちら)。

同じ引き立て役の中でも、一番おしゃれなショウジョウトンボが登場したところで、今回の溜め池群関連記事の幕を下ろすことにします。


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2017-06-08 (Thu)
クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus Oguma, 1915 は同属のギンヤンマと並んで本州以南ではもっとも普通に見られるヤンマ科の種とされています。

私が本州に移住してデジタル一眼レフを首にかけて歩きまわるようになってから、ギンヤンマもクロスジギンヤンマも目撃する機会は多く、カメラを向けるのですが、♂たちはほとんどホバリングすることなく飛び回るものですからなかなか撮影に成功していませんでした。

そんな中で唯一見せられるレベルに撮れたギンヤンマ♂を3年前の9月にブログにアップしていますが(こちら)、これはホバリングした瞬間のものです。

私が5月末に里山の溜め池群を訪れた際も、沈水植物が豊富な比較的澄んでいる溜め池で、クロスジギンヤンマ1♂が水面上を勇壮に飛び回るのを観察することができました。

カメラを向けますが、全くホバリングしないでかなりの速度で飛び回っています。
ただし、高度は比較的安定し、岸にほび平行にほぼ一定速度で飛ぶ傾向があり、しかも目の前の同じ一帯を繰り返し通過します。

そこで、カメラのISO感度を3200と大きくとり、シャッター速度を1250分の1秒という最大速度に設定し、シャッター速度優先オートで、シャッターを押しまくりました。焦点距離はあらかじめこのあたりと狙いを定めた距離にしておき、そのあたりに近づいたときにファインダーをのぞくのではなく、自分の顔よりも低い位置にカメラを構えてレンズの先をヤンマの通る方向に向けて待ち構えました。

こうして350回シャッターを押した中からベストショットを選びだしたのが下の3枚の写真です。
いずれも多少のトリミングを加えています。

クロスジギンヤンマ♂(1)
クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus Oguma ♂(1)(写真はクリックで拡大)

 クロスジギンヤンマ♂(2)
クロスジギンヤンマ ♂ (2)

クロスジギンヤンマ♂(3)
クロスジギンヤンマ ♂(3)

このヤンマが観察された場所の写真を下に再掲しておきます。

沈水植物のある溜め池(2017年5月末)(1)
沈水植物の繁茂する浅い池(上流側を望む)

沈水植物のある溜め池(2017年5月末)(2)
同上の池(堤体部)。この水面上でクロスジギンヤンマ♂が観察された。

観察中、他の♂と追い合いをしてすぐにこの池に1♂が戻り同じように水面上のパトロールを続けたシーンが2,3回観察されましたので、おそらくナワバリとしてこの池のこの部分(堤体沿い、池の面積の数分の1程度)を防衛していたのでしょう。

さてさて、今回、なんとか人に見せられるような写真が撮れたのも、フェイスブック仲間のうちのトンボ写真のプロ・セミプロの皆さんによる、作品や撮り方の工夫談義から少しずつ学ばせていただいた成果かと思います。

まだまだ下手の横好きのレベルですが、少しずつでも進歩していければと思っています。

そうそう、観察を深めることも忘れずにいきたいです。


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2017-06-07 (Wed)
5月末の好天の日の午前、ヒシの生育する溜め池でホソミイトトンボ Aciagrion migratum (Selys, 1876)の交尾も観察・撮影できました(写真1)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(1) 
写真1 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(1)(写真はクリックで拡大)

前回までの記事でとりあげた、コサナエホソミオツネントンボも観察された同じ場所、同じ時間帯(午前9~11時)です。

溜め池の堤体の水辺の草の葉に交尾態でとまっているところを発見・撮影しました。
この角度からですと、♂、♀の両方に同時にピントがあいませんので、♀にピントを合わせたカットを写真2としてお示しします。

ホソミイトトンボ交尾5月末(2)
写真2 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(2)。写真1と同じペア。

交尾中、♂は翅を少し開いた状態で、♀はぴたっと閉じた状態となっています。

この時は、この場所での観察時間が短かったこともあり、交尾後の産卵のシーンを見ることはありませんでした。

去年、別のため池でホソミイトトンボの産卵活動中の写真を撮影し、このブログで紹介しました(こちら)。
ただし、そこでは話題は、
産卵そのものではなく、「なぜホソミイトトンボは越冬のために「フトミイトトンボ」という体型を選ばなかったのか?」という自分の疑問に自分で応えようとしたものです。

さて、話をもどします。
今回のこの池、少し歩くと他の池も2,3ありますので、カメラをぶら下げてそちらも見にいきました。
残念ながら、他の池にはトンボはきておらず、1つの池の周りの林内にカワトンボ(地理的位置からアサヒナカワトンボとされます)を1頭確認しただけでした。

そして、今回のこの池(ヒシの生育する溜め池)に戻ると、池の側面通路沿いの岸の草で、ホソミイトトンボの別ペアが交尾していました(写真3)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(3)
写真3 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(3)。写真1、2とは別ペア。

やはり、♂は翅を半分ほど開き、♀は閉じています。

私が撮影角度を変えるために回り込むと、このペアはちょっと飛んでとまり替えました(写真4)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(4)
写真4 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(4)。写真3と同じペア。

今度は♂の翅は少し閉じ気味ですが、それでも少し開いています。

今回、Googleで「ホソミイトトンボ 交尾」をキーワードに画像検索をしたところ、♂が翅を少し開いているものばかりでしたので、種、あるいは広域個体群のレベルでこの翅の仕草が固定している可能性が考えられました*。

イトトンボの♂が交尾中に翅を少し開いていることは、別に珍しいことではありませんが、前回記事で紹介したホソミオツネントンボの連結中の♂が翅を閉じていることが多かったのとは対照的でしたので、それにこだわった記述となりました。

翅を半開きにしている状態は、翅を閉じる筋と開く筋の両方を稼働させていることになりますので、それなりにエネルギーを消費するはずです。
半開きにしていることにはこのコストを支払う以上の利益(適応的価値)を得ているのではないでしょうか。

一つ考えられるのは、前回のホソミイトトンボの♂のように、他個体が接近してから翅を開いて警告するのもよいが、ホソミイトトンボのようにあらかじめ半開きにしておいて他個体に早々と警告信号を出し続ける、ということです。

この仮説を検証するには、翅を開かせないように手を加えた交尾ペアと、翅を半開きにしたまま固定した交尾ペアを同一条件に置き、そこに接近する他個体の行動上の反応のタイプの比率を統計的に比較するという方法が考えられます。


これで、この「ヒシの生育する溜め池」のトンボのネタは尽きました。

次回記事では車で移動した先の別のため池のトンボ、とりわけヤンマ科の個体をとりあげます。

*注:皆さんの中に、「いいや、こちらのホソミイトトンボ♂は交尾中ほとんど翅を閉じているよ」という方がおられましたら、コメント欄等でリアクションしていただけると有難いです。


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